「収益分析の指標」について説明します。
会社が効率的な経営をしているか、どのように判断しますか?
「貸借対照表」の動画や「損益計算書」の動画で説明した貸借対照表や損益計算書を使って、効率的な経営をしているかを確かめる指標がいくつかあります。
大きく分けると取引収益性と資本収益性があります。
取引収益性とはどれだけ利益を上げているか、資本収益性とは資産をどれだけ活用できているかを表すものです。
まずは取引収益性について説明します。
取引収益性を確認するには損益計算書を使います。
「損益計算書」の動画で、損益計算書には、売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、当期純利益、販売費及び一般管理費などが記載されていることは説明しました。
それらの利益や販管費が売上に占める割合を表した指標が取引収益性です。
売上高総利益率は粗利率とも呼ばれ、売上総利益÷売上高×100で計算し、売上総利益が売上に占める割合を示したものです。
売上高営業利益率は営業利益率とも呼ばれ、営業利益÷売上高×100で計算し、営業利益が売上に占める割合を示したものです。
他にも売上高経常利益率は経常利益率とも呼ばれ、売上高当期純利益率は純利益率とも呼ばれ、売上高販管費率は販管費率とも呼ばれる指標があり、それぞれの利益や費用÷売上高×100で計算し、売上高に占める割合を示しています。
販管費率以外は利益の割合を示す指標なので高い方が効率的で、販管費率は費用の割合を示す指標なので低い方が効率的な経営ができていることになります。
これらの指標の適正水準は業種によって違いますので、一概に言うことはできません。
同じ会社なら別の決算期と比較することで会社の利益や費用効率がどのように変化したか確認できますし、同業他社と比較することでどちらが費用を抑え、効率的に利益が上げられているか確認できます。
例えば、A社の売上高1000万円、営業利益400万円、販管費300万円、B社の売上高5000万円、営業利益1800万円、販管費1600万円だとすると、A社の営業利益率は営業利益400万円÷売上高1000万円×100で40%、販管費率は販管費300万円÷売上高1000万円×100で30%、B社の営業利益率は営業利益1800万円÷売上高5000万円×100で36%、販管費率は販管費1600万円÷売上高5000万円×100で32%です。
A社とB社を比較すると、営業利益率はA社40%とB社36%でA社の方が効率的に利益を上げていることがわかりますし、販管費率はA社30%とB社32%でA社の方が効率的な経営をしていることがわかります。
このように他と比較することで利益を上げる力を確かめることができます。
次に資本収益性について説明します。
資本収益性を確認するには貸借対照表と損益計算書を使います。
「貸借対照表」の動画で、貸借対照表から自己資本、総資産の確認の仕方について説明しました。
それらの資産を使ってどれだけ効率よく利益を上げているかを表した指標が資本収益性です。
ROEは自己資本利益率とも呼ばれ、当期純利益÷自己資本×100で計算し、株主が出資したお金を使ってどれだけ効率的に利益を上げることができたかを示した指標です。
株主の立場から見れば、その会社に投資するとどれぐらいの割合の利益を上げるかを示したものです。
ROAは総資産利益率とも呼ばれ、当期純利益÷総資産×100で計算し、株主が出資したお金や借入などを使ってどれだけ効率的に利益を上げることができたかを示した指標です。
会社にあるすべての資産でどれぐらいの割合の利益を上げるかを示したものです。
貸借対照表と損益計算書の図で見ると、このようになります。
厳密に言えば自己資本と純資産は違うのですが、ほぼ純資産が自己資本になることは「貸借対照表」の動画で説明しましたので、ここでは純資産を自己資本としています。
ROEは自己資本である純資産に対してどれだけの利益を上げたか、ROAは総資産である資産に対してどれだけの利益を上げたかを示した指標です。
例えば、A社は総資産1000万円、自己資本400万円、当期純利益100万円、B社は総資産5000万円、自己資本4000万円、当期純利益500万円だとすると、A社のROEは当期純利益100万円÷自己資本400万円×100で25%、ROAは当期純利益100万円÷総資産1000万円×100で10%、B社のROEは当期純利益500万円÷自己資本4000万円×100で12.5%、ROAは当期純利益500万円÷総資産5000万円×100で10%となります。
A社とB社を比較すると、当期純利益はA社100万円とB社500万円でB社の方が多いですが、ROEはA社25%とB社12.5%でA社の方が自己資本に対して2倍の利益を上げていることがわかりますし、ROA は両社とも10%と総資産に対しては同じ割合で利益を上げていることがわかります。
要は、A社とB社の総資産に対して稼ぐ力であるROAは10%と同じですが、A社は借入などを利用して投資することで、自己資本に対して稼ぐ力であるROEは2倍効率的に利益を上げていることがわかります。
今回はROEやROAで当期純利益を使用しましたが、利益率を表したものですので、当期純利益以外にも営業利益や経常利益などが使われることもあります。
ただ、ROEやROAにも欠点はあります。
ROEは資産を変えることで簡単に数字を操作することができます。
例えば、利益剰余金を減らせば純資産を減らすことができ、ROEを高くすることができます。
利益剰余金を使って自社株買いをしたり、増配したりすれば、利益剰余金は減らすことができます。
先ほどの例のようにROAで比較すると同じなのに、借入で総資産を増やすことでROEを高めることもできます。
ROAは取引先に対する交渉力を反映できません。
取引先に発言力が強い会社は売掛金の支払いを留保することができるので、資金効率が上昇して少ない資金を調達すればよいので、ROAは高くなります。
ROICはROEとROAの欠点を解決した指標です。
ROICは投下資本利益率とも呼ばれ、税引後営業利益÷(有利子負債+株主資本)×100で計算し、事業に投下した資金からどれだけ効率的に利益を上げることができたかを示した指標です。
貸借対照表の負債の部を事業負債と有利子負債に分け、有利子負債+株主資本が投下資本と呼ばれ、ROEは株主資本が分母ですが、ROICは株主資本に有利子負債を加えた投下資本が分母です。
ROAは株主資本に負債も含めた総資本が分母ですが、ROICは総資産から事業負債を除いたのが投下資本で分母です。
株主が出資したお金である株主資本は事業のために使うのは当然ですが、借りたお金である有利子負債は事業のために使うお金が不足しているから借りているので、有利子負債+株主資本が事業に投資した資金との意味で投下資本と呼ばれます。
負債の中には買掛金など、不足している訳ではないのに事業をする上で生まれる事業負債もあるので、投下資本は総資本から事業負債を除いています。
ROEやROAの分子は当期純利益でしたが、ROICの分子は税引後営業利益です。
税引後営業利益とは本業の儲けである営業利益から法人税等を除いたものです。
当期純利益には営業外収益や費用、特別損益が入るのに対して、税引後営業利益は本業のみの利益です。
事業に投資した資金でどれだけ本業で利益を上げることができたかを示すのがROICです。
例えば、営業利益200万円、自己資本400万円、有利子負債200万円、法人税等が営業利益の30%だとすると税引後営業利益は営業利益の70%になるので、税引後営業利益200万円×0.7で140万円になり、ROICは税引後営業利益140万円÷(自己資本400万円+有利子負債200万円)×100で23.3%となります。
本業で投資した資金の23.3%の利益を上げたことになります。
ROICはROEとROAの欠点を解決した指標ですが、ROICにも欠点はあります。
ロイックの概念は難解だったのではないでしょうか?
「決算短信のサマリー情報」の動画で説明しますが、決算短信や会社四季報にROEやROAは記載していても、ROICは記載されていません。
身近に記載されている訳ではないので、概念が難解な指標を理解して自分で計算する必要があるのが欠点です。